お知らせ
★ヨーロッパの保育についてご紹介★
~ドイツの保育園視察~
先日行いました見学会にて当園が導入しているヨーロッパの保育について知りたいとのご意見を頂きましたので、今年の夏、ドイツに一週間滞在し、午前と午後に分けて複数の保育園視察をした際の内容を一部ご紹介致します。
~オープン保育~
今回視察しましたドイツの保育園では、0歳児から異年齢で保育をしています。日本のようなに特定の人とのかかわりは見られません。これは “オープン保育”という取り組みになります。
この“オープン保育”は従来のように先生が前に立って指導する保育方法と違い、子どもが自由に選び遊ぶ時間を十分にとる特徴があります。先生によって計画、指導される保育ももちろん必要ですが、ドイツではそれよりも子どもの発達に大切なのは、自主的な自由遊びの中での学びであることを強調しています。
子どもたちの個性、自立性を尊重し、多種多様性を受け入れることができ、困難を乗り越える力も培うことができる保育形態です。
核となるコンセプトは、すべての子どもたちが心地よく過ごせる場所であること。子どもたちは、どこで何をして誰と遊ぶかを自分で決めることができ、保育園は子どもの決定権や、意思を保証する場とされます。
職員全体で園全体の子どもたちを保育するため「私のクラス」、「僕の担任の先生」という概念がなく、「私たちの園」、「私たちの先生」、職員から見れば「私たちの園児」というとらえ方をするこのオープン保育の考えは当園にも取り入れていきたいと考えています。
ドイツで特に大切にされているのは、「子ども観」です。
子どもは学ぼうとする姿勢を生まれもっていること、子どもには学ぶ権利があることが強調されており、守ってあげる存在ではなく、自分で自分のやりたいことや可能性を決定する力がある子ども像が確立されています。
また、社会の変化に伴いシングルマザーや共働き家族の増加、移民や難民の流入など、さまざまな形の援助が不可欠となってきているため、多種多様なバックグラウンドをもつ子どもたちをそのままで受け入れることのできる園が求められるようになっています。これは今の日本にも通じるものがあるように感じます。
ドイツでもオープン保育に移行するにあたり、一番憂慮されたのは、「子どもと先生とのつながりが弱くなってしまうのではないか?」「年少児がとまどうのではないか?」という点だったそうです。しかし、オープン保育を進めるにしたがって子どもたちの表情や、活動への取り組む姿勢が目に見えてポジティブに変わってきたことによりその考えが徐々に改まっていったそうです。
オープン保育により特に変わったのが、一斉保育において消極的な立場の子どもたちだったそうです。特に彼らにおいて、遊びの選択肢、遊び相手の選択肢、かかわる先生の選択肢などが広がることにより、園がより心地よい場所に変わっていることが実感できたそうです。
子どもの視点にたった自発的で無理のない学びが尊重され、長期的で、人格形成の基礎となる遊びの体験に基づいた保育が大切とされる国がドイツでした。
~参画、小さな科学者~
今回の視察では参画についての取り組みを見てきました。まず、各ゾーンについての注意点として、「大人と同じ扱いをする」そうです。すなわち、子ども扱いをしないということです。工作ゾーンには、工具が置いてありますが、それらは本物で、5歳児が使うということでなく、3歳児でも自分で使えると思ったら使っていいということも参画の一つの考えだそうです。これらの考えは当園でも取り入れていきたいです。
また、ドイツでは基本的に異年齢保育ですが、「子どもの発達過程によって違っていることを受け入れる」とあり、大切なのは、小学校に入る時点で、皆同じ能力を持つということだと言います。また、異年齢で過ごすと、面白そうなものは5歳児が独占する可能性があります。しかし、飽きて他のゾーンに行った5歳児を見ていて、急いで3歳児がそのゾーンで遊ぶそうです。ゾーンの中で最近人気のあるのが人体模型だそうです。各部を取り外せるようになっていて、それを組み立てて遊びます。こちらの人体模型は日本に帰国後、当園にも導入いたしました。子どもたちも初めは恐る恐る触っていましたが、今では人気のコーナーの一つです。
日本では、どうしても乳児から入園となると、保育者との愛着形成(アタッチメント)が大切といって、特定の子どもの担当になることが多いのですが、ドイツでは少し考え方が違うようです。というよりも、最近のアタッチメント研究によれば、複数の保育者との信頼関係を結ぶことがより大切だという結果が報告されているそうです。オープン保育という形態は、それが基盤であり、大切にされています。
子どもたちは、家で、園庭で、公園で見つけたものを園に持ってきて並べ、それを観察することからいろいろと発見をしていきます。園庭には、足の裏の触角を促すような道や石がごろごろと敷き詰めた場所があり、子どもたちは虫眼鏡を持って、石の観察か石の間にいる虫の観察をしていました。
また、大きなかたつむりを飼育するなど生き物とのふれあいを大切にしていました。この大きなカタツムリは買ってきたそうです。そして、園で卵を産み、小さなカタツムリが生まれたそうです。
このような「小さな科学者たち」の取り組みは、もともとは持続可能教育の一環としてユネスコから提唱されたもので、この地域の園長たちが集まって、1日半、保育者は1日研修をするそうです。
今回のドイツ保育園視察ではヨーロッパでの常識と日本の常識の違いを実感し、ヨーロッパの保育方法は学ぶほど私の理想に近い形であり、当園へ積極的に取り入れていきたいと感じるものでした。
今後も”私たちに出来ること、私たちにしか出来ないこと”を探してより良い保育が出来るように努めてまいります。